阿波踊りの用語

阿波おどり[あわおどり]
徳島県が全国、世界に誇る伝統芸能。もともとは徳島城下を中心に展開された盆踊りで、400年の歴史の中でさまざまな変容を遂げながら現在にいたる。「リズムに乗って右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に前に出す」という約束事しかないため誰でも踊ることができるが、その単純さゆえに「粋に踊る」「美しく踊る」ことは難しい。
一丁回り[いっちょうまわり]
三味線を中心とした鳴り物で街の通りを流す情緒あふれる踊り。阿波おどりの原点を感じることができる。
印籠[いんろう]
もともとは薬を入れるための容器。阿波おどりでは連の名前や「阿波おどり」の文字が入ったものを帯から紐で下げて使われている。アクセサリーとしての要素もあるが、煙草や小銭、口紅などを入れるための実用品としても使われる。
団扇[うちわ]
本来の「扇いで風を起こす」という使い方もされるが、踊りを華やかに見せる道具として使われることが多い。踊り手は、踊りやすくするために柄を短く切るなどの工夫を凝らし、美しい団扇さばきを探求している。
演舞場[えんぶじょう]
阿波おどりを披露するための場所として区切られたエリア。有料・無料の桟敷席が設けられていることが多い。桟敷の発祥は、優れた連に賞を出す審査をする「評判所」だったが、現在は観客が踊りを見物できる場として設置されている。徳島市の阿波おどりでは、演舞場として指定された場所以外でも踊りを見ることができる。
男踊り[おとこおどり]
豪快で躍動感あふれる自由奔放に乱舞する男性の踊り。団扇や提灯を使ったダイナミックな踊り方もある。女性による男踊りは、男性に混ざってまったく同じ踊り方をするケースと、女性独自の男踊りを展開するケースがある。
女踊り[おんなおどり]
気品と溌剌さを兼ね備えた女性の踊り。現在の阿波おどりでは個性的な踊りよりも集団美を追求している連が多い。
掛け言葉・囃子言葉[かけことば・はやしことば]
踊りながらリズミカルに発せられる言葉。よしこの節の間の手(あいのて)や囃子言葉が取り入れられたものもある。代表的なものの一つが「ヤットサー」で、フォーメーションを変える合図としても用いられる。
スター踊り子[すたーおどりこ]
ピン(1人)でも存在感のある踊りを見せられる踊り手のこと。連の顔である連長やベテランの踊り手が、独特の踊り方、パフォーマンスを披露する。かつて、名司会者として名を馳せたNHKの宮田輝アナウンサーが、小野正巳、四宮生重郎、姓億政明をスター踊り子として「三羽烏」と呼んだとのエピソードがある。逆にあえてスターを作らずに集団美を追求する方針の連もある。
正調[せいちょう]
本来は「正しく受け伝えてきた(歌い方などの)調子」の意味で音階の正しさのこと。阿波おどりの場合は正統派、本格派といった広い意味で使われることが多い。
総踊り[そうおどり]
主に協会の所属連が合同で踊る、桟敷での流し踊りを指す。踊り子千人、鳴り物数百人という圧倒的な迫力で観客を魅了する。お盆の徳島では南内町演舞場のフィナーレを飾る阿波おどり振興協会による総踊りが有名だが、近年は市役所前演舞場で徳島県阿波踊り協会の総踊りも行われるようになって注目を集めている。県外の阿波おどり大会では、参加連が一斉に踊ることを総踊りと呼ぶ場合もある。
騒き[ぞめき]
阿波おどり特有の鳴り物の音や二拍子のリズムの総称として用いられる。元の意味は「うかれて騒ぐこと、(遊郭などを)ひやかして回ること」。
高張り提灯[たかはりちょうちん]
長い竹ざおの先に付けられた連名の入った提灯のこと。高張り提灯を持つ担当を指すこともある。連の最先頭を行く看板のような存在であり、進むスピードを調整する役目も持つ。
ちびっ子踊り[ちびっこおどり]
子供たちによる踊りで、男の子も女の子も男踊りを踊るケースが多い。ちびっ子踊りだけで一つのパートが作られている連もある。子供なりの可愛らしい踊りもあるが、大人顔負けの芸達者もいる。
鳥追い笠[とりおいがさ]
女踊りの衣装で用いられる笠。鳥追いとは文字どおり田畑の害鳥を追うために顔をすっぽり隠す編み笠のこと。かつてはさまざまな形の笠が用いられていたが、大正中頃から鳥追い笠が主流になった。また、戦前は男性が編み笠をかぶることもあった。
鳴り物[なりもの]
阿波おどりの伴奏を務める楽器(または奏者)。遠くまで音が通る鉦が指揮者役で、軽快なリズムを叩き出す締太鼓と腹の底に響く大太鼓の低音が踊り手の心を弾ませる。三味線と笛は伝統的な「阿波おどりらしさ」を醸し出す音色で、三味線と笛だけを伴奏に踊る様子も見られる。一方で、打楽器のビートを強調するためにあえて三味線や笛を置かない連もある。ほかに小鼓、大鼓、竹、樽、拍子木などが音やリズムに奥行きと幅を持たせるために取り入れられることも多い。
二拍子[にびょうし]
阿波おどりで伝統的に用いられているリズム。「浮き拍子」とも言われる。洋楽の音楽書で言う二拍子とは意味が異なり、跳ねるように間(ま)を取って刻むリズムを指す。間を置かずに同じ間隔で連打されるリズムを「一拍子」と呼ぶこともある。
にわか連[にわかれん]
観ているだけでは物足りず「踊る阿呆になりたい」人たちを受け入れてくれる連。経験不問、服装自由で誰もが気軽に参加できる。徳島市の阿波おどりでは「にわか連」用のハッピの貸し出しも行っている。
奴踊り[やっこおどり]
「奴凧」と「引き手」に扮した踊り手によるコミカルでアクロバティックな演出のこと。オリジナルは淡路島の「凧踊り」で、本家から学んだ連によって阿波おどりに取り入れられるようになった。
有名連[ゆうめいれん]
伝統と高い技量を持っていることで評価の高い連。阿波おどり振興協会、徳島県阿波踊り協会、徳島県阿波おどり保存協会などの団体に所属している連を指すことが多い。
弓張り提灯[ゆみはりちょうちん]
男踊りをより豪快に踊るために用いられる筒型の提灯。舞台上では、中に電球やLEDが仕込まれて光の演出に用いられることも多い。持ち手の弓は、形状や振りやすさなどが工夫されている。
よしこの節[よしこのぶし]
阿波おどりで唄われる歌。起源や伝来については定かでないところも多いが、江戸後期に流行した民謡で、熊本県牛深のハイヤ節、茨城県の潮来節を源とする説が有力。藍商人が京、大阪方面から阿波に持ち帰ったとされる。七七七五の4句26文字の詩型で、形式は都々逸に似る。
[れん]
阿波おどりを踊る団体、グループのこと。伝統ある有名連や企業連、学生連など多種多様で、総数は千を超えると思われる。前傾の角度、肩の入れ方、差し足、手の上げ方、リズムのとり方など、どの連もそれぞれ独自のスタイルを持っている。連の名前は、旗揚げした月にちなむもの、その土地の神社や方言から命名したもの、神話や歴史に由来するもの、縁起かつぎ、言葉遊びなどさまざまな由来を持っている。

出典:あわだま編集部(2015)『阿波踊り本。II』 猿楽社.